カテゴリ:読書( 44 )

会社の女性社員から「面白いから読んでみて」と薦められた1冊。
読むに軽いし面白い。ありそうでなかったかも知れない感じ。

主人公・宝生麗子は国立署・捜査一課(死亡事件担当)の刑事である。
という表の顔を持っている、お嬢様。
日本でも唯一と言える大財閥・宝生グループ。その総帥の娘である。
ただぬくぬくとお嬢様してるだけがイヤで何を思ったか刑事となった。
バーバリーの黒のパンツスーツを着ていながら「マルイで吊ってあったのを買った」と言い切り(男性警官は疎いので気づかない)颯爽と殺人事件の現場で立ち回るのだ。

さて・・・この本の帯に書いてある。「恐れながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」と。
探偵ホームズに医者であるワトソンが随伴していたように彼女にもパートナーがいる。
それが執事・影山である。
くそ暑い熱帯夜であろうと真っ黒のスーツを着用し、宝生財閥のお嬢様をお守りしているのである。

殺人事件の現場を検証し終え、現場近くでリムジンを駆る影山がお出迎え。
帰宅し優雅なディナーを楽しんだ後でワインを飲みながら今日の事件について考える。
そんなときに影山が「何かのお役に立てたら」と事件現場や関係者についての情報を話す。
(もちろん一般的にこんな事しちゃだめだけど、そこは忠実なる執事との信頼関係あっての事)

そこでさっきの言葉だ。
一瞬、何を言われたかもわからなくなるような侮辱的な言葉。
「クビよ!クビッ!出ていけ!」とか言いながらも"さも犯人を知っている"げな影山を追い出せない。
ひと時はこの感情を堪え、影山の推理に耳を傾ける。
さすが「野球選手か探偵になろうと思っていた」だけはある。
現場の状況や関係者の人間関係などを麗子から聞いただけで見事に論理的に犯人を導き出すのだ。

と、こんなパターンの推理モノなんだが、キャラが立ってて面白い。
上司の風祭警部(環境汚染してガソリンを浪費するような車を売ってる会社の御曹司)もいい味を出す。
さすがにこのパターンで行くと早々にネタも尽きそうだが、この1冊を読みきるのにそんなに時間は必要なかった。
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by shivaryu | 2010-12-17 13:58 | 読書
読み終えたのはもうちょい前だけど・・・。
12/24に下巻が出るのを確認しての購入だったけど、読了がちょっと早すぎたw

最初は性質の悪い"イベント"だと認識されていたけど、次第にこれが"ゲーム"だと思い始める。
誰が死に、誰が生き残るのか、という。

「生贄の穴」は、誰かが身を投じることで「自分以外の全ての人が生きながらえる」事ができる。
誰もここへ身を投じない場合は全滅なのだが、クラス単位で生き残る方法がある。
それが「投票システム」だ。
教室に設置された電子黒板にクラスメイトの名前があり、まるで営業成績のグラフのような状態になっている。
生徒達は先に行われた健康診断の後にリストバンドを装着されている。
これにはジョグダイヤルと液晶画面があり、時計表示がされているのだが、ジョグダイヤルを回すとクラスメイトの名前が順に表示される。
クラスメイトの名前が表示された状態でジョグダイヤルを押し込むと、その人へ一票投じる事となる。
多数決により最も票の多い者は死亡する。だが、これによってそれ以外の者は生きながらえる事ができる。

この"ゲーム"については特別な説明がなく、ルールが不明だった。
ただ「生贄を捧げなければ死にます」という説明だけ。
この"イベント"が始まった当初は誰もが悪ふざけだと思っていた、それゆえ混乱の中で「投票システム」は利用された。
自分で自分に投票して見せたのだ。(そして死んでいったのだが。)
これにより、悪ふざけのイベントではなく生き残りを賭けた"ゲーム"なのだと気付き始める。

「生贄の穴」の近くには巨大な電光掲示板があり、時間表示と「Value 24」という表記がされていた。
これがどういう意味なのかは当初わかっていなかったが、後に「生贄の穴」の価値であると判明する。
つまりは、生贄を捧げることで次のタイムリミットまで24時間延長されるのだ。
更には徐々にその価値は下がって行く事になる。

この「投票システム」により学生達は疑心暗鬼になり、あるいは恋人との愛を確かめて多くのみんなのために死を覚悟したり・・・。
友達や好きだった人の死に直面した絶望感や悲壮感と、生きるための希望がいいバランスで保たれた文章構成で飽きる事なく読み進められる。

ただ、誤字も散見されたり、また、一部わかりにくい言い回しなのか文章ミスもあった。
版を改める頃にそれらが校正される事を期待する。

とか言いつつ、下巻が今から楽しみで仕方ない。
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by shivaryu | 2010-12-06 15:20 | 読書
山田悠介っぽい作品だなと思ってつい購入。
こいつぁ重い・・・大人の私が、この作品の世界に感情を移入して「自分なら何ができるか」と考えると非常に重たい。

なんだっけ、こういう心理テストというか哲学問題?ってあるよね。
10人ほど乗ってるトロッコが進んでいってて、分岐点に差し掛かろうとしている。
分岐の先の、一方は崖になっていて、もう一方は人が1人寝転がされている。
はいトロッコの皆さん、分岐のスイッチはどっちにします?みたいなの。
一方は10人が全員死ぬ。 もう一方は寝転がされた1人が死ぬ。
数学的に考えれば、1人死んで10人生きるなら、生存者が多い後者の方が優位かも知れない。
どちらの答えも正しくもあり、誤ってもいる。 人それぞれの解釈によるから答えは玉虫色だ。
しかし10人は死んだ1人の犠牲によって生き残った事を抱えて行かなければならない。
ある者は「あいつのお陰で生き延びた」と思うだろう。
またある者は「あの場合は仕方なかった」と正当化するだろう。

さて・・・この作品はそういう話。
卒業を間近に控えたとある高校が舞台。
「生贄を募ります。制限時間は3時間です。
生贄となる者は校庭の大穴へ身を投じる事。それにより学年全員が生きられます。
誰も身を投じない場合、全員死にます。」
自分が生きるために他人に「死ね」とは言えない・・・普通は言えないよな。
逆に「お前らのために私が死ぬ」とも普通は言えない。
ただ、何もしなければ全員が死んでしまう。

他の多くを生かすために自ら大穴へ身を投じる事は、生贄の死に美談が添えられる。
あいつは立派に死んだ、と。
でも、卒業を控えた高校生達にそれを強いるか・・・あまりに絶望的。

今、中編を読んでいる最中で、最終巻の後編は12/25に発売されるみたい。
感想はもうちょっと後で。 もうオチが気になって仕方ない。
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by shivaryu | 2010-11-29 00:44 | 読書
あまり得意じゃないSF小説。
何が得意じゃないのか。 とんでも設定でどんでん返ししたりするところ。
いったい何を読んでSFを忌避し始めたかは覚えてない。
けど、「えー!まじでか!こいつぁやられた!」みたいなひっくり返されかたじゃなく、「はぁ?んな設定を急に作るなよw」みたいな感じで呆れてしまったんだと記憶してる。
で、だ。この作品を勧められた時に・・・特にいやな感じがしなかった。もうSFアレルギーは解消したのかも。

本作はMM9(エムエム・ナイン)は怪獣モノのSF小説
怪獣が地球上のどこからともなく現れて人間の生活に被害を及ぼす世界。
特に日本は怪獣災害の発生が多く、政府はそれに対して策を練り、対応する部署を設ける。
この作品中で怪獣被害は天災であるため、対応部署は気象庁となる。
「気象庁特異生物対策部」 通称を「気特対」という。

彼らは怪獣が出現した場合の進路予想、怪獣タイプの予測・観察からの推定、撃退方法の模索などを行なう。
私は頭の中で台風みたい扱いだなと思った。 警報・注意報・避難勧告とか出すし。
そして、彼らは強力な火器をもって怪獣を撃退するのである・・・って訳じゃなく、攻撃はもちろん防衛省。
彼らは防衛省が効果的に、そして被害を最小に抑えて怪獣を撃退できるよう指示を出す役割にあたる。

設定がキッチリしててわかりやすくて面白い。
「気特対」についてのバックグラウンドの形成も割りとしっかりしているのは当然ながら、怪獣がなぜ存在するのかというのも尤もらしい設定の物理学で説明されている。
これが眠たい内容じゃないのも物語を盛り上げる材料になっている。
どこまでが本当でどこまでがSFなのか、浅学な私にはわかりかねるがw

要約すると、何トンという体重を動かすには通常の物理学では説明がつかない訳だ。
それだけの質量を動かすためのエネルギーがどこから出てくるのか、どこに蓄えられているのか。
そのため、これを事実とするための理論武装が必要で、それが実にしっかりしている。

この"尤もらしい物理学"を展開しながら物語は進む。
時に部員のボソっとつぶやく言葉で緊張が緩んだりしてユーモラス。
飽きることなく読めた。 非常に良い作品だと思う。
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by shivaryu | 2010-11-26 13:04 | 読書
実に面白かった。これはいいミステリー。
いやー読み返したりして、謎に気づくのに時間がかかった。

とりあえず、セックス表現多いです。官能小説かと思ったもんw
でも、この物語の中でセックスは割と重要なファクトだから仕方ないんだけど。

これは一読して謎を解けるもんじゃないんだけど・・・ちゃんと読んでれば違和感を覚える。
その違和感の答えは、きっと最後まで読んで、改めて部分的に読み返すと腑に落ちるはず。

ありがちな「記憶喪失」っていう題材から入ってどうなるやら、と思ったけど。
分岐点なしに最後まで読めば全部わかって終わり、じゃなくて、ちゃんと読者に読解させるっていうのがやっぱり読み応えがあっていい、と私は思うので評価高いです。

・・・このエントリ、スパムコメント付くんだろうなw
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by shivaryu | 2010-11-21 04:08 | 読書
今まで山田作品は古いものを読んでたんだけど、突然に最新作に手を出した私。
本屋でたまたま見つけたんですよ。
表紙があまりにかわいくて・・・(最近こういう本多いよね。)

で、今作は「精子バンク」のお話。
優秀な人間の精子を買って、優秀な子供を作りませんか?
そんな企業が出てくる。
主人公・麒麟はノーベル化学賞受賞者の精子から生まれた子供。
その兄・秀才(ヒデトシ)はIQ180の数学者から生まれた子供で3歳年上。
麒麟は5歳までは順調に育つ。兄と同様に小学6年レベルの教育は簡単にこなせるぐらいに成長する。
ここまで、学問的には同様なのだが、違うのは性格。
二人とも母の言いつけを聞いて学問に励むのだが、兄は基本的に無口で多くを語らない。というか聞かれても答えない。
比して弟は今日は何があった、こんなことがあったと母親にお話をする。
母親は最初は兄に愛情を注いでいたが、感情を持って接する麒麟に愛を注ぎ始める。

兄は8歳になり、高校生をも解けないような数学問題を解く頭脳となっていくのだが、麒麟は成長が止まってしまう。
どうしても中学生レベルの問題となると理解ができないのだ。
ノーベル賞をとった父親なのにどうして!?こんな子は認めない!と母親は麒麟をベランダへ設置した犬小屋へ隔離。
そして、さらには施設へ放り込み「なかったこと」にしてしまう。

・・・うわー、現実的にありそうな話じゃないか。
いつも思うのなぁ。勉強だけが優秀さに直結するのか?って。
確かに点数がハッキリ出て、経歴に残るからソコを重視するのはわかるけどさ。
勉強そこそこでも感情豊かな子供であって欲しい、って思うのは独身男の夢物語なのだろうか。
読みながら思ったんだけど、精子の出所が良くても母体がアレだと・・・とか思っちゃう。
この母親、劣等感の塊みたいな人で、いつか見返してやるみたいな事を考えてるの。
なんか・・・そういう母親だと生まれてくる子供も知れてるような気がして悲しくなるね。

しかし意に反してこの麒麟は感情豊かに育っていく。
とても優しく、思いやりがあり、人の気持ちを考えられる子供。
周りの冷たさとこの温かさの対比が涙を誘う。
そして(ちょっと読めちゃうけど)どんでん返しもあって、オチが退屈ではなかった。

およそ6時間をかけて読了し「うわ、早朝じゃねぇか」と後悔しつつ感想文を書いた次第です。
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by shivaryu | 2010-10-24 04:37 | 読書
長かった・・・中だるみして読み疲れて時間をかけてしまった。

全てが二人の手紙のやりとりで進行していく本作。
主人公は造船技術士の男性とその妻であり出版関係の仕事に就く女性
男性はギリシャに、女性は日本にいる。
なぜ別々の場所にいるのか、それは読み進めば徐々にわかってくる。
話のテーマとなるのは、男と女・夫婦の愛。
ただ単なるラブレターの応酬ではない。
なぜなら、最初の1通目・女性からの手紙には離婚届が同封されている。
そこから男性と女性の葛藤に満ちた手紙のやり取りが進む。
途中、女性の祖父母の手紙のやり取りも交えるのだが、一貫して描かれるのは男女の性(さが)とそれを超越する愛情。(だと、少なくとも私は感じた。)

携帯電話が普通に手元にある世代にはきっとこの作品の良さはリアルじゃないだろう。
好きなあの子に電話をするのに「お母さんが出たらどう話そうか・・・お父さんだったらどうしよう」とか、
電話番号なんて聞けないから手紙を書いてみよう(住所は卒業アルバムなんかにも載ってたし)・・・なんていうのを体験している私と同じぐらいの世代であればきっと実感することだろう。
いや、携帯電話で思い通りに直接話ができる世代にこそ読んで「古きよき時代」を感じてもらいたいとも思う。
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by shivaryu | 2010-10-06 00:28 | 読書
これぞミステリー! なんだろうか。そんな気がした。
横溝正史賞を受賞されている作品らしく、確かにミステリー!って感じだった。

ゲームソフト会社に働いている「島汐路」が主人公。
とある昔でいう村の庄屋の次女である。
閉塞された田舎社会に嫌気がさしたか数年で職場を変えるライフスタイル。

ゲーム会社に勤めていたという作者、冒頭で汐路がゲーム製作に携わる描写をするんだけど、非常によくできていて、知らなかったゲーム製作の裏側というのが少し見えてくる。

すでに彼女は今の職場を辞めるつもりでいた。そして、しばらく実家へ帰って、海外のソフト会社で働こうと。
担当しているゲームが発売されるまで、とは行かなくなるがデザイナーとしての職務は完了していた事もあり、次のステップへと進む事を決めていた。

そんな時に勤めている会社で事件が起きる。
製作プロデューサーとデザイナー班長が無理心中をしてしまう。
その現場を目の当たりにし、過去を思い出す汐路。
そして、事件を自分なりに追う中で姉との会話で調べた実家周辺での事件との奇妙な接点。

ゲーム製作に関する事も然り、あまり普段ふれない知識にもめぐり合えるかも知れない。
この一冊は面白かった。大きなどんでん返しはないが安定した読後感。
序盤はダレたが、中盤以降はサクサク読み進めた。
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by shivaryu | 2010-09-14 02:05 | 読書
これは恋愛小説。
読んでないけど感想を聞かせて、と渡された。

同じような感覚というのはないけど…生活する上での感情なんかはつぶさに感じ取れて、すぐに主人公の中へ入っていけた。

都会に住むと人になるべく関わらないようにと心がけるところがある。
(マンションなんかの集合住宅で、両隣や階下・階上の人がどんな人なのか知らないのもそういう事なんだろうと思う。)
損得の問題じゃない。得られるものがあるならそうするという訳じゃないけど、お互いに踏み込まれたくないから近寄らない。必要以上に、ではなくて必要ないと断定して。

主人公は女性。名前は未だない。
この女性の視点で描かれており、都会の中の一人として生きているからしばらく名前が出てこない。
名前は誰か複数の人間と接する時に必要になるもんだと気づいた。
二人称までで片付く場面では「わたし」「あなた」で済む。
もちろん、お互いに名前で呼び合う仲になれば、そうであればもっと近しい関係を感じられるが。

一人であれば自意識のみで生きられるため、生活空間もぼんやりするのだろうか。
無意識に近い状態で会社へ行き、仕事をし、帰宅をして寝る、を繰り返す。
その背景はボヤけていて、見えているようで見えていない。
そんな背景でたまたま起こった事から物語は転がり始める。

プロローグで宣言される。私のおかした「あやまち」と彼の「あやまち」によって恋が終わった事を。
恋愛小説のアプローチで最初からそれが終わったものというのも面白い。
そこから彼女のなにげない生活に変化が訪れ、恋は始まる。
そして彼のあやまちを知らされる。 ここで彼女はあやまちをおかしてしまう。
話としてはそれだけだが、彼女の毎日に多少でも同感をしていれば、きっと読後は暗い気持ちにはならないと思う。
もし次があるならば、きっと同じ轍は踏まないだろうな、と。

思った以上に自分が入り込んでしまっていたからか、何だか人恋しい気分になった。
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by shivaryu | 2010-08-29 19:50 | 読書
働かない大人は棄ててしまえ…通称・棄民法を政府は施行した。

未曾有の不景気を迎え、日本政府は大胆な法を敷いた。
18歳以上の就職していない者は特務機関DEOにより逮捕され、無人島へ送り込まれる。
但し、免罪の為に保護者が一定金額を支払うことで執行を免れる事は可能。
また、島で500日間過ごした者は復帰できる。

様々な理由を抱えて島へ流された若者達。
男4・女1のグループで生活は始まる。
果たして生き抜くことは出来るのか…
無人島とはいえ、島民を追い出して造られたもの。
水道・ガス・電気のライフラインは絶たれているが、雨露を凌げる場所もあれば、急に強制退去させられたであろう島ゆえ、食料も多少はある。
平和的な生活からスタートするが、餓えは仲間との信頼など簡単に打ち砕く…

山田作品によくある極限状態だが、人間ドラマもしっかり描かれ、エンディングまで気の抜けない展開。
絶望だらけだが、最後の大オチは評価できる。
読みごたえのある良作だと思う。
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by shivaryu | 2010-08-21 20:10 | 読書