あやまち/沢村凛

これは恋愛小説。
読んでないけど感想を聞かせて、と渡された。

同じような感覚というのはないけど…生活する上での感情なんかはつぶさに感じ取れて、すぐに主人公の中へ入っていけた。

都会に住むと人になるべく関わらないようにと心がけるところがある。
(マンションなんかの集合住宅で、両隣や階下・階上の人がどんな人なのか知らないのもそういう事なんだろうと思う。)
損得の問題じゃない。得られるものがあるならそうするという訳じゃないけど、お互いに踏み込まれたくないから近寄らない。必要以上に、ではなくて必要ないと断定して。

主人公は女性。名前は未だない。
この女性の視点で描かれており、都会の中の一人として生きているからしばらく名前が出てこない。
名前は誰か複数の人間と接する時に必要になるもんだと気づいた。
二人称までで片付く場面では「わたし」「あなた」で済む。
もちろん、お互いに名前で呼び合う仲になれば、そうであればもっと近しい関係を感じられるが。

一人であれば自意識のみで生きられるため、生活空間もぼんやりするのだろうか。
無意識に近い状態で会社へ行き、仕事をし、帰宅をして寝る、を繰り返す。
その背景はボヤけていて、見えているようで見えていない。
そんな背景でたまたま起こった事から物語は転がり始める。

プロローグで宣言される。私のおかした「あやまち」と彼の「あやまち」によって恋が終わった事を。
恋愛小説のアプローチで最初からそれが終わったものというのも面白い。
そこから彼女のなにげない生活に変化が訪れ、恋は始まる。
そして彼のあやまちを知らされる。 ここで彼女はあやまちをおかしてしまう。
話としてはそれだけだが、彼女の毎日に多少でも同感をしていれば、きっと読後は暗い気持ちにはならないと思う。
もし次があるならば、きっと同じ轍は踏まないだろうな、と。

思った以上に自分が入り込んでしまっていたからか、何だか人恋しい気分になった。
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by shivaryu | 2010-08-29 19:50 | 読書